ブックタイトル2019かごしま市民のひろば1月号
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2019かごしま市民のひろば1月号
3 新春対談かごしま市民のひろば2019年(平成31年)1月号語を勉強しなければいけませんが、レシピをメモするとレシピを盗んでいると言われました。それが嫌で、手に書いておいてトイレで紙に書き直したり、帰宅してから屋根裏部屋で30回書いて覚えようとしたりしました。それでも覚えられないときは、ヤギみたいに書いた紙を食べたこともありました。市 長 その気概は、まさに薩摩隼人ですね。上柿元さん この鹿児島で生まれた者として、鹿児島の熱い血は常に持っていますね。7年近いフランスでの滞在中、星空を見上げては苦労して育ててくれた両親を思い、「チェスト!」と自分を励ましながら、本物とは何かを追求し、体験しました。私の情熱に応えてくれたフランスという国には、どれほど感謝してもしきれません。「食の都かごしま」の魅力を発信市 長 上柿元さんの鹿児島の食材をふんだんに使った料理が評判を呼んで、鹿児島の食材の評価が高まっていると常々思っています。おかげさまで、黒毛和牛や黒豚、黒酢など、「鹿児島の黒」はすっかり全国区になっています。上柿元さん タイやカンパチなどがあり、海藻類だってあります。県全体が食材の宝庫なんですね。鹿児島市にも素晴らしい食材がズンバイ(たくさん)あります。ホウレンソウやコマツナにニガウリ、ミカンも採れます。私のふるさと松元にはお茶、あの太ふとか桜島のデコンは世界一ですよ!市 長 鹿児島は、雄大な景観や温泉など自然の恵みがあふれていますが、中でも食は大きな魅力です。温暖な気候を生かして作られる地元産の食材は、新鮮で多種多様です。これを、郷土料理や上柿元さんのフレンチなどいろいろな料理で味わえるのは、本市のセールスポイントだと思っています。 ここ数年、東京の渋谷や両国のお店で、鹿児島の食材をもんじゃ焼きなどご当地の料理に使った期間限定メニューを提供する「食の都かごしまフェア」を行っています。鹿児島市に行って本場の味も体験したいと、非常に好評なんです。鹿児島観光の一番の目的は「食」だという民間の調査結果もありました。今後ますます食の魅力を発信していきたいと思っています。上柿元さん 私がプロデュースするレストランでは鹿児島産の食材をよく使うのですが、国内はもちろん、外国からのお客様にも、どこ産の誰が作った野菜ですとメニューに書いて発信しています。ふるさと大使として「食育」への思い上柿元さん 食の分野で大使になったのは私が初だと聞いています。プレッシャーもありますが、今までやってきたことの中から、人のため、ふるさとのために何かを発揮したいと思っています。平成27年から鹿児島市と一緒に取り組んでいる「食育」は自分にとってその一つです。市 長 毎年、「食育フェスタ」にご協力いただいていますが、今年は母校の松元小学校で食育の授業人はまずみそ汁をマスターしなくっちゃ。おいしくできました?市 長 できました。妻もおいしいと合格点をくれました。上柿元さん うまくなり過ぎて、私の仕事のじゃまはしないでくださいよ(笑)。若者たちへのメッセージ上柿元さん 私の正装はこの白いコックコートですが、実は高校時代、白は白でも体育の先生の白いトレパン姿に憧れて陸上競技に没頭していました。県下一周駅伝にも地区代表として出場したんですよ。 今年でフランス料理の道一本、49年目になります。少年のころ想像もしていなかった道を歩んでいますが、変わらないと思うのは、自分が決めたら、その道を一生懸命に進んでいくことでしょうか。もちろん、何度も失敗をしました。くじけそうになったことも幾度もありました。市 長 振り返れば私も、大学時代など若いころには失敗もいろいろありました。上柿元さん 失敗や挫折は若者の特権です。トライし続ければ必ず道が開ける、どんな場所でも何か道を開くことができると私は思っています。市 長 そうですね。現状にとどまってばかりでは後退につながる、情熱を持って前に進む、これが大事だと思っています。そして、何かを克服したときに、自分の中に大きな力が蓄えられることを信じてほしいと思います。上柿元さん 私なんか、昔はまったく分からなかったフランス語が、今では、鹿児島弁を話していても、フランス語に聞こえるというくらいになりましたよ。市 長 そうそう。上柿元さんと話していると、たまに聞こえますよ、〝カゴシマフランス語?が。「ンダモシタ?ン」とか「ヒッタマガッタ?ン」とか(笑)。上柿元さん 今年も鹿児島弁で大いに鹿児島を語りましょう!市 長 そうですね!をしてくださるとのこと。ありがたいです。上柿元さん 食べることは「生きる」ことです。食べる行為を通して、生きる喜びと感謝の気持ちを教えてくれるものだと思います。舌がいろいろな味覚を覚えていく幼少期に甘味、酸味、塩味、苦味、うま味などさまざまな味を楽しめるようになって、食事を味わう中で、人間の食のために費やされる命や関わる多くの人の存在を知ってほしいと思います。市 長 今の子どもたちは出来上がったものしか見ないことが多いですからね。上柿元さん 厳しい自然と闘っている生産者の皆さんがいるからスーパーで買うことができ、親御さんが料理するからこうして自分は食べられるんだ、ということなどを感じてほしい、感謝の気持ちを持ってほしいんです。市 長 感謝の気持ちは楽しい食卓に欠かせないものです。上柿元さん 市長はうちで料理はされますか?市 長 します!みそ汁は作ります。先日はフレンチを作ろうと思ったらみそ汁になった(笑)。上柿元さん みそ汁は一番いいんですよ。大豆タンパクはパワーのもと、チーズと一緒ですよ。日本修行時代の上柿元さん(左)と師の故ジャック・ピック氏(右)上柿元さんがプロデュースする鹿児島の食材を使用したコース料理鹿児島産のお茶などをPRする森市長食育フェスタ「親子料理教室」で講師を務める上柿元さん