ブックタイトル2018鹿児島県臨床外科30巻
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2018鹿児島県臨床外科30巻
?5?膵腺房細胞癌4例の臨床病理学的検討?5?手術所見:左季肋部斜切開で開腹.脾を脱転,脾動静脈を膵から剥離して膵を腫瘍から3cm膵頭側の位置で切離した.病理組織学的所見:切除された膵臓(尾部)は,白色切断面を有する12mmの結節性病変を有した(Fig.2 a).組織像は,好酸性の細胞が腺房もしくは小集塊状の増殖を示す部分と,小型な核と淡明な細胞質を有する細胞集塊が混在しており(Fig.2 b),前者はα 1-AntichymoTrypsinが陽性(Fig.2 c), 後者はSynaptophysinが陽性(Fig.2 d)という事から,外分泌腫瘍と神経内分泌腫瘍の併存腫瘍と考えられた.摘出標本の病理は,リンパ節転移を1個認めた.術後経過:現在,術後5年で無再発生存中である.患者4:73歳,女性.主訴:なし.既往歴:肺腫瘍(10年前から変化なく経過観察中).現病歴:肺腫瘍の定期フォロー目的のCTで膵体尾部に乏血性の腫瘍を認めたため,精査加療のため当院紹介となった.現症:身長150.3cm,体重51Kg,腹部は平坦・軟で,圧痛無し.入院時血液検査所見:CA19-942.2U/mlと上昇を認める以外に異常所見を認めなかった.腹部造影CT所見:膵体尾部に乏血性に染まる2.5cmの腫瘍を認め,脾静脈浸潤も疑われた(Fig.3 a).また,MRCPでは,腫瘤部の膵管途絶と抹消膵管の拡張,嚢胞様構造を認めた(Fig.3 b).浸潤性膵管癌の術前診断で,膵体尾部切除術を行った.手術所見:上腹部正中切開で開腹した.術前に脾静脈浸潤が疑われていたため脾合併切除とした.膵上縁から脾動脈を剥離して結紮切離,膵下縁から膵背側を剥離して脾静脈を結紮切離した.膵体尾部の腫瘍より2cm膵頭側で膵を切離した.病理組織学的所見:切除標本は,25mmの白色切断面を有する固形腫瘍で嚢胞病巣も伴っていた(Fig.4 a).25mmの白色切断面を有する固形腫瘍は,HE染色で円形の核および好酸球性細胞質または腺様パターンを有する上皮細胞の増殖を示し(Fig.4 b),ACCの診断であった.近傍の嚢胞状腫瘍はHE染色では,小円形の不規則に吻合する索状構造をとる小型細胞で構成され(Fig.4 c,d),免疫染色で神経内分泌腫瘍マーカーのSynaptophysinに局所的に陽性(Fig.4 e),Ki-67は1%未満の陽性率で,NET(G1)の診断であった.術後経過:現在,術後9ヶ月で無再発生存中である.考 察 ACCは,その腫瘍細胞が外分泌酵素産生能を有する悪性上皮性腫瘍と定義されている1).ACCは日本膵臓学会による膵癌登録での115例の臨床的検討2)によると全膵腫瘍の約0.4%の頻度であり,稀な膵腫瘍とFig.1 腹部画像所見(症例?3)a.水平断.b.冠状断.Fig.2 病理所見(症例?3)a. 肉眼像.切除された膵臓(尾部)は,白色切断面を有する12mm の結節性病変を有した(矢頭が腫瘍).b. HE 染色(×40).c. α1-AntichymoTrypsin(×20).d. Synaptophysin(×20).Fig1a bFig2a bc dFig3a bFig.3 腹部画像所見(症例?4)a.造影CT.b.MRCP.