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概要

2018鹿児島県臨床外科30巻

膵腺房細胞癌4例の臨床病理学的検討?6??6?される3).一般にACCの40%にNETへ分化した部分が含まれると言われ4,5),我々の症例もACCとNETの併存がみられ,それらの病理・症状・診断・治療について臨床的検討を行った. 膵管上皮細胞と腺房細胞からなる外分泌成分と内分泌成分が混在する膵臓の腫瘍を膵癌取扱い規約第7版では膵併存腫瘍Combined carcinomaと定義している6).Changら7)は,これらのCombined carcinomaをAmphicrine,Mixed,Collision,Solitary concomitant,Multiple concomitantの5種類に分類しており,ほとんどがMixedに分類されると報告している.今回,我々が経験した4例においては,1例は生検のみで詳細な検討はできなかったが,2例はMixed typeであった.残る1例はACCの病変と離れて,近傍にNET(G1)が存在し,Multiple concomitantに分類されると考えられた.Multipleconcomitantの症例を医中誌にて検索した限り,膵管癌とNETのMultipleconcomitantの症例に比べ,ACCとNETのMultipleconcomitantの症例報告はなく,我々の症例は極めて稀であると思われた. 膵併存腫瘍の症状としては,腹痛や体重減少を認めることもあるが,無症状で偶然発見された症例が多い.また機能性のNETが併存している場合,低血糖発作を契機に発見された症例も報告されている8).自験例では,1例は神経症状を主訴とする症例で,3例は他疾患の精査時に偶然見つかった.また,併存腫瘍の画像に関しては,組織の種類・割合・分布により多彩であることから,術前に診断することは困難であるとされる8-10).我々の症例の造影CT画像では2例は多血性腫瘍で,1例は乏血性腫瘍,1例はまだらな漸増性に造影された腫瘍であった.術前には,多血性腫瘍はNETが,乏血性腫瘍は膵管癌がそれぞれ疑われていた.病理組織は,多血性腫瘍の2例は,NETを豊富に含む膵併存腫瘍で,乏血性の1例はACC成分が腫瘍のほとんどを占める膵併存腫瘍であった.まだらな漸増性腫瘍の1例は手術不能症例であったが,外分泌と内分泌成分がまだらに分布する腫瘍であった可能性が推測された.また,ACCのリンパ節転移と遠隔転移に関しては,切除例の57.6%で転移陰性であったと報告2)されており,膵管癌のリンパ節転移頻度よりも低率であるが,自験例では,4例中2例にリンパ節転移を認めた.遠隔転移は28.7?53.1%に認められるとされ,転移形式は肝転移が最も多く3),自験例では,4例中2例に肝転移を認め,1例は同時性肝転移を認め,1例は異時性肝転移であった. 膵併存腫瘍に対する治療に関しては,それぞれの併存成分についての治療を考える必要がある.ACCに対しての治療としては,有効な化学療法が確立されていないことから治癒切除が唯一の根治的治療と考えられている11).一方でNETの成分に対する治療として,リンパ節郭清を伴う膵切除が推奨されている.また転移を伴う膵NETの手術適応は,集学的治療で制御可能な転移巣を有する膵NETは,切除可能であれば転移巣含めた切除術が推奨されている12).自験例では,4例中1例は,膵頭部に発症し肝転移・多発リンパ節転移を伴っていたため,GemcitabineやS?1による化学療法を行ったが予後不良であった.残りの3例は,体尾部切除術とリンパ節郭清で,R0切除がなされ,3例とも術後補助化学療法は行わなかったが予後は比較的良好であった. 膵ACCの治療成績については,本邦切除例での5年生存率が43.9%,生存期間中央値が41ヶ月と浸潤性膵管癌に比して良好な成績が報告されている.一方,切除不能例では5年生存率0%,生存期間中央値3ヶ月とされており予後不良である2,3).自験例では,手術を受けた3例のうち1例は術後16年目で肝転移再発をきたしたが,肝切除術が行なわれ,現在初回手術から23年目再発なく経過している.残る2例もそれぞれ術後5年,術後9ヶ月で無再発生存中である.化学療法のみ行った1例は10ヶ月で癌死した.膵ACCでは,Fig4a bc d eFig.4 病理所見(症例?4)a. 肉眼像.切除標本は,最大割面25×22mm 大の白色調充実性病変を認め,(矢頭),その尾側割面において径約4mm の嚢胞病変(矢印 )を認めた.b. HE 染色(×40).c. HE 染色(×2).d. HE 染色(×40).e. Synaptophysin 染色(×40).