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概要

2015鹿児島県臨床外科27巻

〔鹿臨外会誌27巻〕3.18Ⅰ頸部・心血管-3-入院後経過手術4日前からdexamethasone6mgの内服を開始し甲状腺機能の可及的正常化を目指した。手術2日前の甲状腺機能はFT3 8.2pg/ml、FT4 1.8 ng/ml、TSH 0.01μIU/ml未満と改善、脈拍数72回/分と理学的にも機能亢進の症状はなかった。手術時の大量出血を想定し術前自己血貯血を1200ml行った。巨大甲状腺腫による気道狭窄がある事、充分な頚部伸展が得られないことから麻酔導入は困難と思われた。麻酔科医と綿密な連携を取り、直ちに緊急気管切開やPCPSが行える状況でビデオ喉頭鏡を使用し自発呼吸を残した意識下挿管による導入を試み、安全に導入することができた。手術は出血量を減少させるために極力小さな皮弁形成で甲状腺全摘術を行った。通常とFigure.5術中写真真手術手術時時間間:3:3時間25 25分、出血量:160ml:160ml摘出標本本:463.2g弱拡大像:大小の甲状腺濾胞が形成され、菲薄な線維性結合組織によりにより不完不全完な全小な葉小構葉造構を造呈をしていた。呈していた。中拡大像:びまん性に過形成性変化を有する濾胞を形成し濾胞のコロイド腔ド辺腔縁辺部縁には部には空胞空を胞認をめた。認めた。Figure.6摘出標本と病理組織学像-3-は異なり甲状腺表面の怒張血管がほとんどなく順調に甲状腺全摘が完遂できた。手術時間は3時間25分、出血量は160ml、摘出甲状腺重量は463gであった(Fig.5)。病理組織学的には甲状腺はびまん性に大小の濾胞より形成されバセドウ病に矛盾しない所見であった(Fig.6)。術後は副甲状腺機能低下症を併発したが、その他の経過は概ね良好で問題となるような偶発症の併発はなく10病日に自宅退院となった。考察山下らは巨大甲状腺腫の定義を経験的に200gとしているが明確な定義はない。外科医の立場からすると大きな甲状腺腫は術野の妨げとなり、一般に組織血流も増加し表面に怒張している血管が存在することが多い。甲状腺腫の大きさと術中食血量は明らかな関連性があり、甲状腺腫が大きいほど反回神経麻痺や副甲状腺機能低下症などの合併症の発生率は高くなる(1)(2)。また大きな甲状腺腫のため術前の甲状腺機能のcontrolに難渋することも多いため機能亢進のままで手術に踏み切らざるを得ないことも少なくない。実際の手術に当たってはまず麻酔導入が問題でビデオ喉頭鏡やPCPS補助下の導入も行われている。本症例は甲状腺クリーゼの既往があり甲状腺腫が大きいことから初診時から手術を前提とした。KIの併用で甲状腺機能も順調に改善し機能正常化の手術を予定したが、経過中に甲状腺腫の増大とともに甲状腺機能が悪化し、その後のcontrolに非常に難渋した。甲状腺腫の増大の原因としてはTRAb値が高値を持続していたことより病勢の急激な悪化やKIが関与した可能性が考えられた。