ブックタイトル2015鹿児島県臨床外科27巻
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2015鹿児島県臨床外科27巻
〔鹿臨外会誌27巻〕3.18Ⅴ肝・その他-47-膚に2本の2-0ナイロンが出ている。そのまま結紮すると結紮糸が皮膚上に来るので、持針器で一方の糸に角針をつけ皮下を通して他方の糸と同じ穴から出して結紮し、縫合糸および結紮点が皮下に来るようにした(図3)。鮒田式胃壁固定具を用いることで、短時間にメッシュの縫合固定を広範囲に行うことができた(図4)。考察2014年にInternational Endohernia Society(IEHS)による腹壁ヘルニアおよび腹壁瘢痕ヘルニアに対する腹腔鏡手術のガイドラインが発表された9)。手術手技に関する、外科医が行うべきとされるGrade B以上のrecommendationを紹介する。1本目のカメラポートは、視覚で確認しながら挿入し、創を小さくする。癒着剥離の範囲はメッシュがあたる範囲にとどめる。ヘルニア門の大きさは正確に、腹腔内で計測されるべきである。腹腔内でメッシュをあてる前にヘルニア門の縫合閉鎖を併用する場合は、非吸収糸を用いるべきである。腹壁ヘルニアの腹腔鏡下手術で用いられるメッシュは、ヘルニア門のすべての方向を少なくとも3~4cm覆う必要がある。メッシュの固定は、縫合固定のみまたは縫合固定とタッカーによる固定との併用で行われるべきである。大きなメッシュを腹腔内に挿入する場合は、固く円筒状に巻いて安全に挿入すべきである。以上がGrade Bである。また外科医のオプションまたは行ってもよいというGrade Cではあるが、タッカーのみによるメッシュ固定は、タッカーの個数が多いために術後疼痛が強く、縫合固定に比してメッシュの収縮が多いとされた。また通常のメッシュ固定だけでは、漿液腫、膨隆、患者の不満足が高率にみられるため、腹腔鏡下にヘルニア門を縫合閉鎖し、さらにメッシュ固定を行う方法を提唱する報告もあるが10)、この方法はガイドラインでは、小さいヘルニア門の場合にGrade Cとなっている。本邦において腹腔鏡下腹壁瘢痕ヘルニア修復術は、2012年に保険収載され、その手術料は13,770点すなわち14万円足らずである。しかしメッシュを固定するタッカーの材料費は請求できない。吸収性タッカーのアブソーバタックの15発入りが44,800円、30発入りが58,000円、チタン製タッカーのプロタックの20発入りが36,200円である。巨大な腹壁瘢痕ヘルニアでは60発ほどタッカーを使用するので、高いコストがかかるのが問題である。縫合固定をふやしてタッカーの使用を減らすことは、コストの上でも有意義であるが、ガイドラインでもメッシュの収縮を防ぐ効果や術後疼痛の軽減効果も報告されている9)。今回使用した鮒田式胃壁固定具は、皮膚から腹壁、メッシュまでの縫合固定を非常に簡単に短時間に行うことができることができる有用な道具である。しかし縫合糸が皮膚上に2ヶ所に出ているので、そのまま結紮したら皮膚上に結紮点が形成される。結紮部を皮下に置くために、これまでも鮒田式胃壁固定具の穿刺針を曲げるなどの工夫がなされていたが、手技が複雑と思われた11)。今回われわれは、2ヶ所皮膚から出た縫合糸の1本に針をつけて持針器で把持し、同じ糸が出ている針孔に針を刺し皮下を通して他方の糸の針孔から針を出すことで、容易に皮下で結紮することができた。結語腹腔鏡下腹壁瘢痕ヘルニア手術において、鮒田式胃壁固定具をメッシュの腹壁への縫合固定に使用し、簡便に短時間に腹壁および-47-