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概要

2015鹿児島県臨床外科27巻

〔鹿臨外会誌27巻〕3.18Ⅴ肝・その他-45-発された鮒田式胃壁固定具を、腹壁とメッシュの全層縫合固定に使用し、さらに皮膚上に出た縫合糸を容易に皮下で結紮する方法を工夫したので報告する。症例症例は32年前に開腹下胆嚢摘出術を受けた72歳女性である。下腹部痛のために受診し、臍の右側に手拳大の膨隆が認められた。腹部CTで、腸管を含むヘルニア内容が脱出する腹壁瘢痕ヘルニアが認められた。身長150cm、体重56.5kg、BMI 25.1と軽度肥満が認められた。手術手技術前準備:全身麻酔下に腹部触診と超音波検査を行い、ヘルニア門を確認する。ヘルニア門にマーキングを行い、ヘルニア門の大きさを計測する。ヘルニア門から5cm以上外側まで覆うことができるメッシュを準備する。超音波検査で左右の季肋部を精査し、1本目のトロッカーを留置する部位に癒着がないか否かを確認する。使用器械:メッシュは、コヴィディエンジャパン社製のPARIETEX TM OPTIMIZEDCOMPOSITE(PCOx)MESH(オプティマイズドPCOxメッシュ)を使用した。オプティマイズドPCOxメッシュは、癒着防止面にコラーゲンコーティングが施してある、ポリエステル製のメッシュである。タッカーは、コヴィディエンジャパン社製の吸収性タッカーのアブソーバタックTM5mmを使用した。手技:1本目のトロッカーは、手術瘢痕およびヘルニア門からもっとも離れた左肋骨弓下に1本目のトロッカーをオプティカル法で留置した。1cm小切開し、エチコン社製の12mm径のエクセルトロッカーを皮下脂肪層まで挿入し、腹腔鏡をトロッカー内に挿入しトロッカー先端からトロッカー先進部を観察し、皮下脂肪層、腹直筋鞘前葉、腹直筋、腹直筋鞘後葉、腹横筋、腹膜前脂肪組織、腹膜を順次確認しながら腹腔内に到達した。気腹を8mmHgで行った。2本目3本目のトロッカーは5mm径トロッカーを、腹腔鏡観察下に可及的にヘルニア門から離れ、かつヘルニア門を囲むような同心円上に留置した。メッシュをヘルニア門の外側5cmまで覆うように固定するので、トロッカーの位置はヘルニア門から5cm以上離れた位置に、トロッカー同士がなるべく離れるように留置した。ヘルニア門内および周囲に腸管や大網が強固に癒着していたので、腸管を損傷しないように丁寧に剥離した。Swiss cheese defectと言われる多発性のヘルニア門が存在することもあり、癒着に覆われた潜在性のヘルニアを見落とさないために、前回手術創全体を確認すべきである。特にメッシュを固定する予定の部位の癒着剥離は必須である。本症例でもヘルニア門の頭側に潜在性の腹壁瘢痕ヘルニアが認められた。癒着剥離を終了後に、再度ヘルニア門のサイズを確認し、ヘルニア門の外側5cmを被覆するサイズのオプティマイズドPCOxメッシュを選択した。コラーゲンコーティング面を内側に円筒形に丸めて腹腔内に入れて展開した。ヘルニア門から5cm外側の12時、3時、6時、9時の位置に1mmの小切開を行い、ニードル鉗子を腹腔内に挿入し、メッシュの4方向にあらかじめ縫い付けてある糸を把持して腹壁外に引き出し、メッシュを腹壁に引き寄せた。メッシュの辺縁を吸収性タッカーで3cm間隔に全周固定した。またメッシュのヘルニア門に近いところにも2重に全周タッキングした(ダブルクラウン法)。-45-