ブックタイトル2015鹿児島県臨床外科27巻
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2015鹿児島県臨床外科27巻
〔鹿臨外会誌27巻〕3.18Ⅳ胆・膵-39-が52例と22.3%にみられた。PDでは有意にDGEは少なかったが、SSPPDとPPPDでは差はなかった。膵液ろうは全体の32.7%に発生し、内Grade Cは6例(0.27%)に発生した。Grade Cの6例中2例が死亡した。死亡例は腹腔内膿瘍に引き続く出血2例であった。Grade Cのうち仮性動脈瘤からの出血の2例は緊急TAEで救命できた。膵液ろう発生は、膵癌、乳頭部癌、IPMNに比較的少なく、胆管癌に多かった。膵胃吻合ではGradeAが1例のみであった。【考察】膵頭十二指切除は難易度の高く術後の合併症も少なくはない手術である。当院では従来の幽門側胃切を伴うPDを行ってきたが、症例によっては術後栄養障害の予防に十二指腸球部を含めた全胃温存するPPPDを選択した1)。PPPDの術後DGEが少なからず発生することから、DGE予防には幽門綸を切除したほうが良いとの考えや、亜全胃温存であれば栄養学的にPPPDと差はないと考えられSSPPDも選択するようになった2)。今回の成績ではPPPDとSSPPDにDGEの発生率に差はなかった。幽門輪切除するばかりではなく、残胃の血流、神経支配、再建経路などが胃の蠕動に関与すると考えられた3)。術後膵液ろうは、膵癌、IPMN、乳頭部癌に少なく、胆管癌に多かった。膵癌やIPMNなどは腫瘍や粘液による主膵管閉塞に伴う随伴性膵炎で膵組織は硬く、主膵管も拡張していることが多い。したがって膵空腸粘膜吻合も比較的容易なため縫合不全による膵液ろうは少なかったと思われる。一方、胆管癌の場合、膵管拡張もなく、膵組織もいわゆるsoftpancreasであり、その再建としての膵空腸粘膜吻合は困難なことが多く、total dorainageとならざるをえない。その結果膵実質と空腸密着が不十分な場合膵液ろうをきたすと思われる。膵空腸粘膜吻合困難な場合、膵断端を大きな胃の中に陥入する膵胃吻合は安全と思われる4)。実際、8例の胃膵吻合を行い、1例にGrade Aの膵液ろうを認めたのみであった。膵空腸吻合との比較には今後の症例の蓄積が必要と思われる。重症の膵液ろうGradeCのもっとも注意すべき合併症は膵液により自己消化された血管破綻による出血である。当院でも4例の出血がみられ、2例に仮性動脈瘤の存在が確認された。ドレーン留置されていた場合、ドレーンからの血性浸出液がみられたらただちに造影CT検査を行ない、瘤の有無や造影剤の漏出を確認し、瘤の存在が認められたら緊急血管造影を行い、塞栓術(TAE)を行うことが、救命手段として必須を思われる5)。我々も2例の術後仮性動脈瘤にたいし緊急のTAEを行い救命できた。【まとめ】過去約10年のPD症例223例について検討した。予後は乳頭部癌が最も良く次いで胆管癌、膵癌の順であった。DGEは23.3%に発生し、胃切を伴うPDでは少なかったが、PPPDとSSPPDに差はなかった。膵液ろうは32.7%に発生し、GradeCの2例は出血死した。膵液ろうによる仮性動脈瘤の対しては緊急TAEが有用であった。胆管癌のように膵組織が柔らかく、細い主膵管の場合は膵胃吻合も選択しうる術式と思われた。参考文献1)Traverso LW et al. Preservation of thepyrolus in pancreaticoduodenectomy.SurgGynecol Obstet. 1978; 146: 959-9622)Kawai M et al. Pyrolus ring resection-39-