ブックタイトル2015鹿児島県臨床外科27巻
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2015鹿児島県臨床外科27巻
-22-Ⅱ上部消化管〔鹿臨外会誌27巻〕3.18局所進行食道癌に対する集学的治療戦略鹿児島大学病院消化器・乳腺甲状腺外科学*鹿児島大学離島へき地医療人育成センター惠浩一、奥村浩、内門泰斗、喜多芳昭、尾本至、上之園芳一、有上貴明、盛真一郎、馬場研二、石神純也、*大脇哲洋、夏越祥次【はじめに】食道癌に対する化学療法、化学放射線療法(以下、CRT)を含む集学治療の工夫により、切除率の向上および予後の改善が認められる報告がみられるようになってきた。本邦では局所進行食道癌に対する術前CRTが術前治療として推奨されるだけのエビデンスレベルの高い報告はないが、2012年のCROSS Trial(1)で、カルボプラチンとパクリタキセル併用41.4Gy照射で有意に予後が改善したことが報告され、術前CRTの有用性は注目されている。当科ではこれまでに局所進行食道癌に対する術前CRTのランダム化比較試験を行い、術前治療としての明らかな有用性は認めないものの、奏功例には長期生存が認められることを報告した(2)。また臨床経過の解析から、原発巣のみならず転移リンパ節の制御が重要であることを確認した(3)。今回、当科で行ってきた臨床研究の検討から、局所進行食道癌に対する集学的治療(術前CRT+手術)の有用性を検討した。【対象と方法】2009年までにcT3、4で術前CRTが施行された症例の治療成績を検討した。T4は臨床上切除可能な症例で、明らかな大動脈、気管浸潤症例は除外した。M1は鎖骨上リンパ節転移陽性による遠隔転移症例のみとした。術前CRTの化学療法はCDDP(7mg/m2)を放射線治療日に1時間点滴静脈投与、5日間投与後2日休薬および5-FU(350mg/m2)を24時間持続点滴静脈連日投与で4週間行った。放射線治療は全例で外照射2Gy/回、5回/週の通常分割方法で4週間行われ、照射線量の合計は全例40Gyであった。照射範囲は原発巣の上下3cmおよび画像上リンパ節転移を疑う範囲とした。TNM分類(4)に基づき病期診断を行い、病理組織学的効果判定は食道癌取扱い規約(5)による切除標本でのHE染色所見にもとづきGrade分類(Grade3を著効、Grade2を奏効、Grade1を無効と判定)を行い、原発巣およびリンパ節の奏功度別の生存率および再発状況を検討した。検討された病理学的因子は原発巣Grade(Grade1/2、3)、壁深達度(pT0-3/4)、リンパ節転移(pN0/1)、リンパ節転移個数(≦3個/≧4個)であった。累積生存率はKaplan-Meier法で算出し、logrank testのp値0.05未満を有意とした。有意な予後因子については、比例ハザードモデルにより独立した予後規定因子を求めた。【結果】対象症例は、男性43例女性1例、平均年齢60歳であった。cT3/T4、cN0/N1、cM0/M1はそれぞれ33/11例、8/36例、32/12例であった(表1)。対象症例44例の原発巣効果はGrade2、3/Grade 1がそれぞれ24/20例、ypN0/1は16/28例であった。単変量解析ではリンパ節転移、リンパ節転移個数のすべての因子が有意な予後因子であった。多変量解析ではypN(p=0.0074)および原発巣Grade(p=0.03)が独立予後因子であった。最終組織診断の結果を基にした5年生存率はypN0症例(n=16)で83%、ypN1かつ原発巣Grade 2、3(n=13)-22-