ブックタイトル2015鹿児島県臨床外科27巻
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2015鹿児島県臨床外科27巻
図〔3鹿臨外会誌27巻〕3.18Ⅱ上部消化管-15-ab図4図3図4実性腫瘤を認めた(図4)。HE染色では紡錘形細胞が錯綜性に密に増生していた。免疫染色ではc-kit、CD34陽性で、Fletcher分類(腫瘍径5cm、核分裂数:1個/50視野)は低リスクであった。その他、病理組織学的に断端陰性であった。術後経過:術後からPPIの静脈内投与を行い、経口摂取開後に内服に変更した。術後4日目から食事開始し、ドレーンは、術後5日目に抜去した。その後の臨床経過に問題なく、術後10日目に軽快退院となった。考察原発GISTに関しては、組織診断がついており切除可能であれば、第一選択は外科治療とされ、偽被膜を損傷することなく外科的に断端陰性を確保し完全に切除することが必要とされる2)。壁外発育型GISTに関しては、腹腔鏡のみによるsimple wedge resectionで切除可能であるが、混合型を含めた壁内発育型の場合は、余分な胃壁切除が必要となることが多い。内視鏡と腹腔鏡を協調して行うLECSは、そのような症例であっても、内視鏡で胃内腔から病変辺縁を視認し、切離ラインを設定することで、余分な胃壁切除を最小限にすることが可能である。GISTに対する腹腔鏡下手術の安全性および予後に関しては、開腹手術と比較し、無作為比較臨床試験の報告はなく、現時点で確立はされていない2)。腫瘍径が増大すると、悪性度が高くなり、しかも手術操作による偽被膜損傷をきたす可能性が高いことから、腫瘍径5.1cm以上の胃粘膜下腫瘤に対しては、腹腔鏡手術を積極的に勧める根拠に乏しい2)。その他に、delle所見を認めた場合は、陥凹部から腫瘍細胞の腹腔内散布の危険性も指摘されている。以上より、腫瘍径が5.1cm以上の場合や、delle所見を認めた場合は、腹腔鏡手術の適応は慎重であるべきと考える。最近、腫瘍細胞の播種の危険性を回避する手術手技としてinverted LECS 3)、非穿孔式内視鏡的胃壁内反切除術(non-exposedendoscopic wall-inversion surgery;NEWS)4)、そして、胃壁を開放せず胃局所切除を行う術式(combination of laparoscopic and endoscopicapproaches to neoplasia with non exposuretechnique;CLEAN-NET)5)などの報告がある。腹腔鏡・内視鏡合同手術は、今後さらなる工夫を重ね、将来的には、胃癌に対する低侵襲な縮小手術となる可能性もあり、手技の開発・改良が望まれる。-15-