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概要

2015鹿児島県臨床外科27巻

〔鹿臨外会誌27巻〕3.18Ⅱ上部消化管-9-Ⅱ上部消化管座長鹿児島大学大学院消化器・乳腺甲状腺外科学内門泰斗XP-Trastuzumab療法を含む集学的治療によりCRを得た多発肝転移合併胃癌の1例今給黎総合病院外科抄録立野太郎、浜之上雅博、野口智弘、下之薗将貴、下村寛貴、牟礼洋ToGA試験の結果により、HER2陽性胃癌に対するXP-Trastuzumab療法の有用性が確立されたが、それでもHER2発現high群にてOSが16.0ヶ月となお遠隔転移を伴った胃癌の予後は不良である。今回われわれはXP-Trastuzumab療法を含む集学的治療により、初発から25ヶ月を経過しCRを維持している多発肝転移合併胃癌の1例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する。症例は初発時70歳の男性。2013年1月に胃角小彎の2型胃癌と同時性多発肝転移を指摘された。末梢血中遊離癌細胞(CTC)も陽性であった。生検組織標本によるHER2免疫染色にて陽性、score3であったため、XP-Trastuzumab療法を開始した。3コース終了時点でCTCは消失し、CT、GFでの評価で原発巣、肝転移ともにPRであった。7コース終了後の評価では原発巣、肝転移ともにさらに縮小を認めた。12コース終了時点の評価では原発巣はSDとなり、肝転移は縮小した状態が維持されていた。しかしその後、Capecitabineが原因と思われる皮疹が出現。5-FU系薬が原因の皮疹と考えられ、CDDPの総投与量も限界となっており、CPT-11単独療法に切り替えた。CPT-11単剤3コース終了後の評価にて肝転移の消失を認めたものの、GFにて依然原発巣のviabilityを認めたため、2014年6月に腹腔鏡下幽門側胃切除術とD2リンパ節郭清、肝転移瘢痕の生検を行った。病理では原発巣のみに癌細胞を認め、#3リンパ節および肝転移瘢痕の生検標本に転移が化学療法により消失した痕跡を認めた。術後は本人の希望もあり、術後補助化学療法は施行していない。術後8ヶ月を経過したが、無再発生存中である。緒言ToGA試験の結果により、HER2陽性胃癌に対するXP-Trastuzumab療法の有用性が確立されたが、それでもHER2発現high群にてOSが16.0ヶ月と、HER2陽性であってもなお遠隔転移を伴った胃癌の予後は不良である1)。今回われわれはXP-Trastuzumab療法を含む集学的治療により、初発から25ヶ月を経過しCRを維持している多発肝転移合併胃癌の1例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する。症例患者:初発時70歳、男性。既往歴・家族歴:特記事項なし。-9-