ブックタイトル2015鹿児島県臨床外科27巻
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2015鹿児島県臨床外科27巻
〔鹿臨外会誌27巻〕3.18Ⅰ頸部・心血管-7-緊急足部バイパス術が有効であった、血栓除去術後再閉塞を来した急性下肢動脈閉塞症の一例鹿児島大学病院心臓血管外科・消化器外科学矢野圭輔、今釜逸美、荒田憲一、緒方裕樹、保坂優斗、豊川建二、重久喜哉、向原公介、松葉智之、藏元慎也、永冨脩二、松本和久、山本裕之、四元剛一、井本浩1.はじめに急性下肢動脈閉塞症に対する外科的血行再建術として、血栓除去術は現在でもGoldenstandardな治療である。しかし、近年、閉塞性動脈硬化症の増加に伴い、閉塞性動脈硬化症の急性増悪、いわゆる急性動脈血栓症の患者の治療機会が増加してきている。急性動脈血栓症では、動脈硬化による病変が既に背景として存在しているため、血栓除去術のみでは十分な血流再開が得られないことも少なくない。今回、初回治療時に血栓除去術を施行されたが、翌日に再血栓閉塞を来した右下肢急性動脈血栓症症例に対し、緊急で自家静脈による足部バイパス術を施行して救肢し得た1例を経験した。足部バイパス術の重要性と必要性を再認識させる症例であった。2.症例症例は61歳、男性。右下肢の安静時痛とチアノーゼを主訴に、当院へ救急搬送された。2日前に、右下肢急性動脈閉塞症と診断され、前医にて血栓除去術を施行され、一旦、虚血症状の改善がみられた。しかし翌日、下肢冷感や色調不良、疼痛などの下肢虚血症状が再燃し、血管超音波検査で再血栓閉塞がみられ、当院へ救急搬送された。来院時のバイタルサインは、脈拍が110 /分であったが、心電図波形は正常洞調律で、その他は正常であった。右下肢は冷感、チアノーゼが著明で、身体診察では、右大腿動脈は触知可能であったが、膝窩動脈、足背動脈、前後脛骨動脈は、触知不可能であった。来院時の虚血進行度を、知覚障害と運動障害、血流計で評価すると、TASC分類でカテゴリーⅡbに該当し、外科的血行再建術の適応と判断した。当院で施行した下肢血管超音波検査で、浅大腿動脈遠位に、やや高輝度で器質化した血栓閉塞を認めた。足背動脈は血流がほぼ消失していたが、管腔は開存しており、バイパスによる外科的血行再建術が可能と判断して、緊急足部バイパス術(浅大腿動脈遠位-前脛骨動脈終末部バイパス術)を施行した。手術時間は7時間以上と長くなったが、術後の血流計や血管造影検査で、術直後から血流の再開を認めた。下肢血管超音波検査でも、血流の低下やグラフトの狭窄はみられず、術後のABI、SPPの値も良好であった。術後の経過は良好で、退院した。3.考察急性動脈閉塞症は、突然四肢が虚血に陥り、四肢壊死や、虚血再潅流障害による心不全、腎不全、呼吸不全などの多臓器障害を引き起こして、死に至る可能性のある重篤な疾患である。成因により、血栓症と塞栓症の2つに大きく分類される。塞栓症に比べ、血栓症の方が、動脈硬化が背景にあり側副血行路が発達しているため発症は緩徐だが、救肢率、予後ともに不良である1)。今回の症例は、前医血管超音波検査で膝窩動脈以下の狭窄を指摘されており、背景には閉塞性動脈硬化症があり、急性動脈血栓症を来した。TASC分類で-7-