2008鹿児島県臨床外科20巻

2008鹿児島県臨床外科20巻 page 53/110

電子ブックを開く

このページは 2008鹿児島県臨床外科20巻 の電子ブックに掲載されている53ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「電子ブックを開く」をクリックすると今すぐ対象ページへ移動します。

概要:
〔鹿臨外会誌20巻1号〕3.1 特 別 講 演 - 47 -- 47 - 精巣導体は、精巣と陰嚢の間にある軟部組織です。これがだんだん短くなってきて精巣を下のほうに引っ張り降ろしてくるのではないかと言われています....

〔鹿臨外会誌20巻1号〕3.1 特 別 講 演 - 47 -- 47 - 精巣導体は、精巣と陰嚢の間にある軟部組織です。これがだんだん短くなってきて精巣を下のほうに引っ張り降ろしてくるのではないかと言われています。陰部大腿神経の陰部枝からCGRFが出て、精巣導体の退縮に関わっているらしいと言われています。 また、精巣導体の中には平滑筋があり、これが収縮することで精巣を下のほうに引き寄せてきているという説があります。これにも陰部大腿神経の末梢からCGRPが放出されて収縮を起こさせていると考えられています。 腹膜鞘状突起は、精巣の下降に先立って精巣導体の中に降りてきますので、鞘状突起を介して腹圧がかかり精巣を下のほうに押し下げているのではないかと考えられています。 (図-5)。 週齢24、体重500g以下の症例です。右側の鼠径部に精巣らしきものを触れます。これをエコーで見ると、精巣の周りに腹膜鞘状突起があり、そこに水が溜まっているのが観察できます。週齢27週、518gで右精巣は鼠径管、左のほうにも精巣が出現してきます。週齢30では、右は陰嚢のそばまで降りてきます。左はまだ鼠径管の中にあります。週齢40週のころには、まだ1,100gしかありませんが、陰嚢の中に精巣を触れます。エコーで観ますと腹膜鞘状突起は大きく開存しております。週齢49、2,200gでは、精巣の周りには腹膜鞘状突起が大きく開存しているのが観察されます。最終的に64週では、ほとんど腹膜鞘状突起の開存は確認できなくなり、少量の水を残すだけで正常の陰嚢と精巣の形が見られるようになってきました。 これは精巣腫瘍のため切除した検体です。精巣導体が精巣に付着していることこがわかります。停留精巣の手術の時にも精巣導体を切除します。停留精巣でどうして精巣が降りてこないかを、調べはじめたところです。まずアルシャンブルー染色です。これ染まるのはヒアルロン酸ですが、臍帯はヒアルロン酸でできているのは周知のことなので、controlとして染めています。ヒアルロニダーゼを使いますと染色が消えますので、これがヒアルロン酸であることがわかります。精巣導体もこのように非常にヒアルロン酸に富んだ組織であるということがわかります。α-smooth muscle actine を染めてみますと、このように平滑筋が血管とは別に存在します。神経を染めるS100蛋白抗体で染めましても、精巣導体の中にも神経線維が存在していることがわかります。精巣下降の中のメカニズムの一つの証明になるものではないかと思います。これらが停留精巣の発症にどのように関わっているのかは、これから調べてゆく予定です。<低出生体重児の鼠径ヘルニア> 腹膜鞘状突起の閉鎖不全が、鼠径ヘルニアや陰嚢水腫になるとされています。腹腔鏡下鼠径ヘルニア手術の際に対側が観察されるようになりました。片方に鼠径ヘルニアがあると、乳幼児期では、半分くらいに対側の鞘状突起は開存をしているとがわかってきました。ところが、片方がヘルニアになった場合、対側がヘルニアになる確率は、多い報告で10分の1、少ないところでは50分の1ぐらいですので、腹膜鞘状突起が開いているから、必ずしもヘルニアになるわけではないことがわかります。ただ腹膜図-5