桜島爆発の日 大正3年の記憶 立ち読み

桜島爆発の日 大正3年の記憶 立ち読み page 15/18

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概要:
桜島爆発の日

早く引き返そう」と言ったものの船頭の熊八は、船主の市兵衛とその弟の熊助だけでも救出しなければと思っていたので、そんな水夫に「もう少しだ頑張ってくれ」と哀願するように、何回も言ったそうです。その時、七蔵兄は二十四歳の男盛りで、脇櫓を漕ぎながら 「よし、乗り合わせた船だ。死ぬ時は一緒だ」と言ったそうです。 船は持木浜に、乗りあげるように接岸しました。ところが船主の市兵衛や熊助はもとより元気な者は誰もおらず、浜に残っていたのは病人や老人といった歩けないような人達ばかりでした。元気な者は先程の噴火で二度目の船を待ち切れず、燃崎へ徒歩で避難して行ったあとだったのです。船は持木浜の残留者を全部乗せると、すぐ出発しました。噴火は刻一刻と烈しさを加え、噴煙はすぐ頭の上にかぶさってきたそうです。 一方、船を待ち切れずに燃崎へ走った人達はどうだったのでしょうか。 彼等が燃崎にたどりついた時には市兵衛船は持木に着く寸前で、彼等の視界に入らなかったわけです。彼等は沖小島から谷山の方角に逃げて行く二隻の船を発見し 「あら、もうあの船は谷山へ逃げた」41