桜島爆発の日 大正3年の記憶 立ち読み

桜島爆発の日 大正3年の記憶 立ち読み page 13/18

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概要:
桜島爆発の日

 そして恐る恐る空の噴煙を見上げると、噴煙は私たちのすぐ頭上にふりかかろうとしています。 「あの噴煙には毒ガスがある」と私共は信じていましたから、女子供は狂ったように泣き叫びました。その噴煙から逃れ、沖小島から鹿児島市の谷山に近い宇宿海岸まで約二里半(十キロ)、必死の力漕にもかかわらず積荷が重いので、やっとその日の十二時頃宇宿海岸に着きました。 それにしても、天気が良く波が静かであったから助かることができたと、神様に感謝しました。そして自分が助かってみると、朝早く家で別れ、ほかの船で垂水方面に逃げた父や兄弟が無事だったかと、それが心配でなりませんでした。 梅田雲賓の歌に  親思う心にまさる親心  今日のおとづれ何ときくらんという臨終の句がありますが、父と母は私のことをどれぐらい心配しているだろうかと思いながら、噴煙を見上げておりました。 さて、先程少し述べましたように市兵衛船は、私共の新八船より六分か七分早く沖小島39